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みんなで一緒に食べる食事「共食」にはメリットがいっぱいある
あなたは毎日の食事でどのようなことに気をつけていますか?栄養バランスを整える、食品の安全性、食べ残しを減らす、食事のマナーなどでしょうか。子どもには栄養たっぷりの食事を作って食べてもらいたいけど、毎日献立を考えたり調理することは大変です。食育推進に関して農林水産省では「食育に取り組むとどんないいことがあるのか?」についてエビデンスに基づいた内容が公開されています。その中で「共食」についてご紹介します。家族や友人仲間と一緒に食事をすることを「共食」といいます。栄養バランスの取れた食事が取れる、フードロスにもつながり環境にもやさしい、食事のマナーを身につける機会になるなど「共食」にはいいことがたくさんあります。そして親子で取り組みやすいことも特徴です。
「共食」を取り入れることで、何よりも食事は「楽しむ時間」になります。これを機会に家族や仲間と一緒に食事をすることを見直してみませんか?
食育とは
「食育とはさまざまな経験を通して『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの」です。
(農林水産省ホームページより https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/network/about/index.html)
食べることは生涯にわたって続くことであり、子どもの頃に身についた食習慣が食生活の基礎になります。食育は具体的に、食べ物について知る、生産や流通、作る人への感謝、環境や自然との関わり、調理や料理、食文化について興味を持つなど内容は多岐にわたります。健康的な「食」のあり方や考え方を身につける「食育」の中に、だれかと一緒に食事をする「共食」が含まれます。
共食とは
「共食」とは家族や地域社会、職場の仲間または友達が集まって、同じ食べ物や飲み物を共に飲食することです。「ともぐい」とは言いません。「共食」は、単に一緒に食べるだけでなく「おいしいね」「今日はこんなことがあったよ」など会話をすることも含まれます。また、食事のあいさつやマナーを学ぶ機会でもあります。子どもにとっては、食習慣が身につく時期でもあるため「共食」による影響は大きいです。
共食と孤食
共食の対義語としての孤食
「共食」の対義語として「孤食」があります。「孤食」とは、家族や仲間がいてもいなくても一人で食事をすることです。近年では、ライフスタイルの変化や子どもの保育事情、通塾、高齢化などにより「孤食」は増加傾向にあります。週の半分以上1日の全ての食事を一人で食べている人は約15%と言われています。また「一人で食べたくないが食事の時間や場所が合わないため仕方がない、一緒に食べる人がいないため仕方がない人」もいるのが現状です。
子どもの孤食の問題点
成長過程にある子どもにとって「孤食」はどのような影響があるのでしょうか?
核家族化が進み、共働きも増えたライフスタイルの変化により子どもの「孤食」も増えています。子どもが「孤食」になることによって、自分の好きなものばかり食べてしまい栄養バランスが崩れ、肥満や偏食が起きたり、体力や集中力の低下をまねいてしまう可能性があることが問題点です。
一人での食事はつまらない、おいしくない、または味わって食べることがないなど負の感情を抱きながら食事をすることになります。
食べこぼしたり、汚い食べ方をしても、スマホやテレビを見ながら食事をしても一人で食事をしていると叱ってくれる人はいません。マナーを教えてくれる親などがいないことで「間違っていること」に気づかずに食習慣は形成されていきます。このようにマナーを教わる機会がなくなるため「いただきます」「ごちそうさま」といったあいさつ、お箸の使い方やマナーも学べず将来的に対人関係に影響を及ぼしたり、子ども自身が親になったときに我が子に教えることができなくなります。「大人を見て学ぶ」ということは「共食」にとって大切な環境です。
共食のメリット7つ
1.健康的な食生活
一緒に食べる人みんなが同じものを食べたり飲むことによって、自分の好きなものばかりではなく、栄養バランスの良い食事をすることができます。栄養バランスの良い食事を摂ることは、健康的な生活をすることにつながります。「栄養バランスの良い食事」とは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の望ましい組み合わせと量を食事として摂ることです。病気のリスクを低下させたり、死亡リスクも低くなることが報告されています。内臓への負担を減らすために、バランスの良い食事をゆっくりよく噛んで食べることも大切です。
また、みんなで食べる時には、インスタント食品やファストフードの利用が少ない傾向が見られます。家族や友人と楽しい食事を共有することで心にもプラスの影響を与えるでしょう。
2.好き嫌いについて
苦手なものでも周囲の人が美味しそうに食べていたら、その刺激を受けて食べてみようとしませんか?自分一人では知らないことも周囲の人からの影響や教えてもらうことによって食べてみようとする意欲が湧いてきます。特に子どもにおいては、見た目によって好き嫌いが起こることもあり食べず嫌いにつながることがあります。一緒に食べている人が美味しそうに食べている姿を見て、いつの間にか「食べていた」という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
3.規則正しい食生活や生活のリズム
食事の時間が規則的であると、生活のリズムが整います。生活のリズムが整うということで 空腹になるタイミングも整ってきます。そのため、朝食の欠食が減る、間食の時間も規則正しくなる、睡眠時間も十分に取れることで生活のリズムも整います。朝食の欠食が減ることで、心の状態を健康に保つことができます。これにより学力や体力の向上が見込まれると報告されています。
また、睡眠時間を十分に取ることで、疲れがとれ体の不調やストレスを感じることも減ってきます。
4.コミュニケーション能力
家族や仲間と一緒に食事をする時間には、笑顔があり会話がなされることでコミュニケーションが生まれます。これにより人間関係が強化されていきます。「おいしいね」「今日こんなことがあったよ」「この野菜はおじいちゃんが作った野菜だよ」などいろいろな会話が飛び出してきそうですね。また、家族や仲間が一緒にいることで安心感や暖かさも感じることができます。誕生日や祝日、特別なイベントなどで家族と一緒に食事をすることは、会話もはずみ思い出にもなります。
5.食事のマナー
「いただきます」「ごちそうさま」などあいさつによって食べ物や調理してくれた人に感謝を伝えます。お箸の使い方にもマナーがあります。汁物などで箸を洗う所作の「洗い箸」、一旦取りかけてから他の料理に箸を移す所作の「移り箸」、箸先を噛む所作の「噛み箸」器や鍋の中の料理を箸でかき回して探る所作の「探り箸」、箸をナイフとフォークのように両手に1本ずつ持って料理をちぎる所作の「ちぎり箸」などお箸のマナーは数多くあります。食事のときの姿勢も大切なマナーのひとつです。
これらのマナーは、小さい時から一緒に食べている家族、特に「親」の様子を見ながら少しずつ覚えて身につけていきます。
一緒に食べる人がいる「共食」だからできることではないでしょうか?
6.食に対する関心
4.でもご紹介したように、「共食」では会話が生まれます。
その会話の中で、食卓に並んだ料理について話すことも増えるでしょう。「おいしいね」「冬にはお鍋が最高だね」「お鍋に入っている食材は何が好き?」など会話はつきません。食材をどのように調理したのか?どこで購入したのか?産地について、生産者に
ついて、食べ残しやフードロスなどの環境問題についてなど食の話題はたくさんあります。人間は、自分が知らないことには関心が持てません。たくさんの会話の中からの学びは、その後の食習慣にも影響するでしょう。
7.食文化の継承
行事食や郷土料理、季節の料理などの食文化も子どもたちへと受け継がれていくことは大切です。食材についてや調理法、マナーについてもその地域独自のものがあります。例えば、お正月にいただくおせち料理は、出来上がったものをいただくことはありますか?調理することはできますか?それぞれの料理の意味はわかりますか?「共食」は、だれかと一緒に食べることだけでなくコミニュケーションも含まれることから、一緒に材料を準備し調理をすることで受け継がれる「食」もあります。おばあちゃんの味、おふくろの味という言葉もありますよね。食にまつわる文化についても「共食」によって知る機会になります。
共食を大切にするために私たちにできることは?
では「共食」をするためにどのようなことができるでしょうか?
「共食」は豊かな人間性を育みますが、毎回の食事でだれかと一緒に食べることは難しいかもしれません。身近なことでできることとして例えば、スマートフォンやテレビを消す、栄養バランスの取れた食事を用意してみんな同じものを食べる、目につくところにジュースやスナック菓子を置かない、休日を利用して家族みんなで一緒に食事をする、保育園や小学校の給食メニューを参考にして子どもと一緒に料理を作って楽しむなど少しの工夫でできることはあります。「共食」を実現するためにできることや工夫を考えることも「共食」のなかに含まれるのではないでしょうか?
まとめ
「共食」といってもたくさんのメリットがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
ただ近年は、子どもの通塾や親の労働環境による家族時間のズレや親の事情により孤食せざるをえない場合もあります。また、高齢化により一人で食事をしなければならない場合もあるでしょう。新型コロナウイルスなどの影響により家族での食事の機会も減ったかもしれません。でも、メリットを知って自分ができることを取り入れることで状況を変えることは可能です。人の体は食べた物で作られています。「食べる力」は「生きる力」です。あなたは今日だれと一緒に食事をしますか?「共食」をすることでだれかと一緒に食べる楽しみが増えますように。